エスケー鉱産株式会社 代表取締役 星野大輔
①イベントを終えて数日が経った今の気持ちは?
2026年の『未来の都市をつくろう』に延べ1200人を超える来場者があり、率直にとても嬉しいです。
昨年からのリピーターも多く、3日間通して来場する方もいらっしゃいました。
「楽しい」「もっと一緒にやりたい」と感じてくれる人が多かったことが特に嬉しかったです。ボランティアとして参加してくれた人も含め、イベントを「一緒につくる」人が増えていることを実感しました。
一方で、来場者が増えたことで、安全性・粉じん対策・会場のキャパシティ・運営オペレーションなど、改善すべき課題も明確になりました。今後は、より多くの人が安心して楽しめる環境をつくっていきたいと考えています。
※2026年の『未来の都市をつくろう』のイベントレポートはこちらからご覧ください。
②『未来の都市をつくろう』を始めたきっかけや、大切にしていることは?
資源として扱われるレンガや石などの山を、工場から持ってきて室内の空間に再現するという、コラボアーティストのTAKU NISHIMURAさんのアイデアがベースです。当初は「実現するのは難しい」と思われるようなアイデアでしたが、それを面白いと思い、どうすれば実現できるかを考えて形にしていきました。
会社として以前から取り組んできた資源のリサイクルや有効活用への思いが、この企画の背景にあります。ただし、イベントで資源の大切さを強く「教える」ことを目的にはしていません。
一番大切にしたいのは、まず直感的に「楽しい」と感じてもらうこと。説教くさくならず、「楽しい」という感情の中から、何かに興味を持ったり、心が動いたりすることを大切にしています。
本物の素材に触れて、自由に遊び、考え、つくる。そうした体験そのものを楽しんでほしいです。

③『未来の都市をつくろう』の今後の課題や改善したいことは?
大きくは「安全性」「キャパシティ」「シンプルさとコンテンツのバランス」の3つです。
来場者が増えたことで、会場のキャパシティが限界に近づいています。
初日は開場してから30分程度で100人以上が来場し、開始直後にパンクしかけました。2日目には何度も入場制限が必要になりました。
来場者が増えるほど材料が不足するという新たな課題も見えてきました。現状でも4tトラックの積載量ギリギリまで資材を運び込んでいるのですが、コンテンツのシンプルさを維持しながら、材料の種類や量を増やすなど、次の工夫が必要です。遠方から来たのに全然遊べなかったというお子様が出ることはなるべく避けたい。今後は、会場に入れなかった人も別の場所や企画で楽しめるような「包括的な設計」も必要だと感じています。
安全性については特に重要な課題です。レンガや石など、リアルな素材に触れること自体がこのイベントの魅力であり、子どもたちの原体験として必要だと感じているので、安全を追求しすぎて本物の素材を排除することは避けたいと思っています。
一方で、例えば今回「夜光石」として準備した石膏片から発生した粉じんについては、来場者・スタッフの健康面からも解決は必須です。
増える来場者数に対応できるように、「危険を避ける設計」と「リアルな素材に触れる体験」を両立させることが至上命題となります。
④今の日本の社会や都市には、どんな課題があると感じている?
日本は古くから木材文化が根付いており、地震や台風などの自然災害も多いことから、建物などが壊されては新しく建て替えられる「スクラップ&ビルド」が繰り返されてきました。その結果、まだ使えるものや新たな価値を見出せるものまで大量に廃棄されています。リサイクルは進んでいるものの、工作物や建材など、まだ十分に価値を再発見できていないものも多いです。
埋め立てに頼らざるを得ないものを、もう一度有効活用できる社会・風景をつくっていきたい。そのためにも、資源の有効活用に関心を持つ人がもっと増えてほしいと願っています。
⑤AIなどのIT技術は、資源利用をどう変える?
AIを使って素材開発や生産工程を最適化する「マテリアルインフォマティクス」などの技術が進んでいます。生産工程が効率化されれば、試作や廃棄を減らし、資源をより有効に使える可能性があります。
自社でも、シミュレーション解析を活用して実際の試作を減らす取り組みを行っています。今後AIによってさらに高度なシミュレーションが可能になれば、資源の有効活用にもつながると考えています。
⑥技術が進歩する中で、人と人とのつながりはどうあるべき?
ビジネスは「人ありき」だと考えています。
作り手の思いと使い手の思いを結びつけることが、自分たちの役割。思いのない、無味乾燥なものだけではなく、そこに人の物語があることが大切です。人と人がつながり、物語を紡いでいくことで、ものを大切にする気持ちや新しい取り組みが生まれます。
『未来の都市をつくろう』に集まってくる人たちにも、そうした思いを持った人が多いと感じています。

⑦「未来を紡ぐプロジェクト」を進める中で、想像していた未来と違ったと感じたことは?
当初は、もっと企業がやっているイベントっぽい形にするつもりでした。採用や事業にダイレクトにつながるような、企業活動としての色をもう少し強くしたいと考えていました。
しかし実際には、「純粋に楽しい」「面白い」「もっとこんなことをしたい」という人が集まる場になっていきました。アートを中心としたコミュニケーションの場になったことは、当初の想像とは違っています。ただし、それは「思惑から外れた」のではなく、むしろ嬉しい方向への変化だったと捉えています。
昨年、お子様と一緒にイベントを訪れた方が、最初は「子どもが楽しんでいるな」という程度に感じていたものの、時間が経った後に「自分も何か発信してみたい」と思い、そのきっかけとして『未来の都市をつくろう』を思い出したそうです。
イベントに参加したその場では、本人も気づいていなかったかもしれない。でも、心のどこかが動かされていた。その後、実際に声をかけてもらい、新しいコミュニケーションや取り組みにつながりました。
「その場で何かを学ばせる」のではなく、知らないうちに心を動かされ、後から何かが生まれる場になっていることに気づいたのです。
⑧10年後、20年後、この活動がどんな形になっていてほしい?
『未来の都市をつくろう』自体は、現在の形の純粋さや性質を変えたくない。新しい人やアイデアを受け入れながらも、イベントの核はブレずに守り続けます。
『未来の都市をつくろう』そのものを大きくし続けるというより、そこをハブにして新しい何かが生まれることを大切にしたいと思っています。その場から生まれたアイデアや出会いを、別のプロジェクトにつなげていく。実際に新しい取り組みがいくつか始まっています。
今後は、大学との産学連携や地域との取り組み、大人も楽しめるアート・ものづくりの場などに発展させたいです。将来的には、3日間だけのイベントではなく、恒久的に存在する「プレイパーク」のような場が理想です。
⑨今年はたくさんの方がボランティアとして参加してくれたことについて
今回は小学生、中学生、大学生、社会人まで、世代を超えたボランティアさんが参加してくれました。単なる「運営スタッフ」ではなく、一緒に都市をつくる「都市の住人」のような感覚で参加してもらえたことが嬉しかったです。1日だけのボランティアさんも、数日参加してくれたボランティアさんもいて、世代を超えて同じ場を共有できました。
今後も、これまで関わってきたスタッフだけではなく、新しい価値観を持った人たちに参加してほしいと思っています。
ボランティアは小学校高学年くらいから参加しやすい形を考えていますが、安全面などを含めて設計していく必要があります。小さな子どもだった来場者が、成長してまた戻ってきてくれるようなイベントにしたいです。
⑩最後にメッセージを
今回、延べ1200人を超える人に来てもらえたこと、楽しんでもらえたことが本当に嬉しいです。今後も課題を一つずつ解決しながら、より楽しいイベントにしていきたいです。
11月にも別会場で『未来の都市をつくろう』を開催予定!
瀬戸市の愛知県陶磁美術館 つくるとこ!陶芸館の2つの実習室を使わせてもらって展開します。「越境」をテーマに、美術館と企業、地域と地域など、さまざまな境界を越えていく世界観をつくりたいと構想しています。
どうぞお楽しみに!
『未来の都市をつくろう in 愛知県陶磁美術館 つくるとこ!陶芸館』の詳細はこちらをご覧ください。
